SPFM Light カスタム活用術②『SPFM Lightアタッチメント電源基板』レビュー

レトロパソコン

<読まれる前に>
今回、私の知識や経験が不足していることからいくつかの引用をしております。ただし、記事自体は私自身が責任をもって編集しておりますので内容について何かありましたらご連絡ください。

はじめに

この写真を改めて見ることで、かつて「魔改造」と呼んでいた「SPFM Light」のカスタマイズ、それが私にもできたのだなというのを確信したのであった…

これは何?

上の写真、SPFM Lightに接続している手前側の基板に注目頂きたい。

これは「Caribou Works」から頒布されたSPFM Lightに改造を施す「SPFM Lightアタッチメント電源基板」と呼ばれる電子工作キットである。USBからの電源供給で駆動させているSPFM Lightのオペアンプを、外部電源を使用して24Vで駆動させることと、USB電源の安定供給を主目的として制作されたものだ。

入手方法

SPFM Light関連の同人ハードでは毎度おなじみ、家電のケンちゃん(@kadenken)にて販売。ただし、今のところ在庫切れで再販の目処は立っていないという。

実はこの最後の在庫を私が手に入れたのであった。このブログを見て欲しいと思った人には本当に申し訳ない。 私も複数欲しくなってしまったので次回の頒布を共に願おう。

キットの特徴

キットの取扱説明書から特徴を掻い摘んで紹介する。

  • SPFM Light専用の24V駆動電源基板
  • USBのローノイズ・オペアンプの高音質を実現
  • ヘッドフォンアンプ内蔵
  • 各種ハイグレードコンデンサ使用

1.SPFM Light専用の24V駆動電源基板
本キットはメインとなるのはSPFM Light本体の電源強化をはかる基板であるが、基板や使われている部品だけでもSPFM Light2枚分はあろうかという価格だ。それだけでもう只者ではない感じがビンビンと伝わってくる。

ちなみにSPFM Lightの作者である、がし3さん曰く『RE:birthの音源モジュールとかSPFM Light/SPW/簡易ミキサーの基板サイズはサンハヤトのユニバーサル基板ICB-93シリーズと同じサイズなんですね。これは、RE:birthの基板設計者が選定したサイズでなんとなく引き継いでます(・ω・)(*1)』とのことなので、もしかしたらこの思想が受け継がれているのかもしれない。

*1…がし3さんのツイートを引用

2.USBのローノイズ・オペアンプの高音質を実現
なぜSPFM Lightにこのようにド派手な改造を施すのか。24V駆動にすることは『オペアンプに供給される電源電圧が高いほど、扱える信号の振幅が大きく取れて有利(*2)』であるのと同時に『高音質を追及するためにオペアンプの選択幅を広げることが目的(*3)』であるからだ。

*2…マルツオンライン「オペアンプの電源供給」より引用
*3…四谷言ノ助さん(@g_yotuya) 著書「よちゅ~んぶれんど チューンマニュアル」より引用

ただし、それを実現させるためには本キットの作製だけでなくSPFM Light本体にパターンカットやジャンパーを施して、もともと意図していたものと違う回路に改造するという難易度の高い作業を伴うため今までの活用術とは違って敷居の高い内容となっている。

3.ヘッドフォンアンプ内蔵
電源基板側にはヘッドフォンアンプの専用回路が設けてあり、もちろんこれらにも電源の安定化やオペアンプの高音質化がなされている。キットには2種類のオペアンプが用意されているので好きなものを選んで実装させることができる。今回はクリアなサウンドになるという「TPA1152」を選択した。

4.各種ハイグレードコンデンサ使用
主要なコンデンサにはOS-CONとUTWRZを使用して電源の低ノイズ化と高信頼化を。そしてヘッドフォンアンプの出力コンデンサにはUTSJを、小信号の音声信号のカップリングコンデンサにはMUSE ESを採用して高音質化を図っている。

これらのように、この「SPFM Lightアタッチメント電源基板」には様々な改善・改良を施している。これから作製して使用するのがとても楽しみな内容となっている。

SPFM Lightの改造

2箇所のパターンカット

まず最初にSPFM Light本体の作成を行うのだが、今回は『はんだ付けをしていない真っ新な基板に対してパターンカットを行う (*4) 』事にした。

*4…UME-3さん(@ume3fmp)がラス2で同キットを入手し作製しており、その際のツイートなどを参考にしました。

理由は2つ、 パターンカット作業は何も部品が実装されていない状態で行うのがやりやすいのと、改造品に手を加えて失敗したら手元に動作品のSPFM Lightがなくなってしまうのを恐れたからだ。

実際、組みあがった後の検証については通常版のSPFM Lightが丸々と残っていたためにパーツ単位での取り換えによる不具合事象の切り分けにとても役立ったし、パターンカット作業も最後までテスターで確認しながら確実に行えたため、この判断は間違っていなかったと思われる。

それで、キットの取扱説明書の写真印刷が若干見づらかったためカットの場所を撮影してみた。

このように独り言なツイートしておきながら、ちゃっかり有識者から大丈夫とのお言葉を戴いたので安心して作業ができた。

なおパターンカットのやり方だが、私の場合はひたすらカッターでパターンをガリガリと削り切っただけだ。

本キットの取扱説明書によるとパターンカットの方法として

  • カッターで溝を掘る
  • ルーターでパターンを削る

といった簡単なやり方のほかにも、カッターで溝を掘ったあとにはんだごてを当てることでパターンを剥離させるやり方もあるとのことなので、自分で気に入ったやり方を選ぶといいだろう。

パターンカット後の修復作業

テスターで2か所のパターンカットを確認、導通しなくなっていれば問題なく作業ができたということだ。次にレジスト補修剤で削った痕を修復していく。

何重にも塗ったのでやり過ぎなくらいかとは思ったが、量が足りずに錆びるよりはマシだろうとてんこ盛りにした。この作業まで来たときは「ああ、これで後戻りはできないな」と覚悟を決めたのだった。

一部コンデンサの変更

これで、あとは残り部品のはんだ付けをすれば出来上がり…と思いきや、オペアンプに関わるコンデンサを耐圧24Vになるようにしなくてはならない事を思い出した。

そんな事もあろうかと、しこたまコンデンサを買い漁っておいたのだ。左が店舗(デジット・千石電商・マルツ)で買った品で主に国産のものを。右は通販で買いそろえた海外製のものを並べてみた。

正直言って、こんなにあっても使い分ける能力は無いのだが、万が一部品が足らず、買いに行くのが面倒になって投げてしまうよりはマシという事で、まあよしとしてもらいたい。ズルい大人は目的の為なら手段を選ばないのだ。

また話が逸れてしまった。

今回、オペアンプのカップリングコンデンサをMUSE ESからPHILIPS/BCに変更。続いて音声出力ボリューム手前のコンデンサをMUSE MWからSPRAGUEの24V耐圧仕様に変更。そしてC1とC24もかなり狭いスペースながらも出来る限り24V耐圧仕様のものに変更をした。あとは、よちゅ~ん♪レシピで作製した部品をそのまま採用している。

※7/18追記
コンデンサの選定は、四谷言ノ助さん(@g_yotuya) 著書「よちゅ~んぶれんど チューンマニュアル」 の内容を参考にしました。

はんだ面のジャンパー処理

はんだ面に2か所「SPFM Lightアタッチメント電源基板」からのSPFM Lightのオペアンプに24Vの電源を送るためにジャンパー線をはんだ付けすることになる。場所はIC3の4番ピンと8番ピンだ。付属のものは撚り線が太いので近隣の足に当たらないよう注意しながらはんだづけをしていこう。

実はジャンパー線の接続が大の苦手で、ここだけで何回も失敗している。もう少し上手な付け方が出来るようこれからも精進していくつもりだが、どなたか良いコツがあれば教えていただきたい。

まあとにかく、これでSPFM Light本体の改造品が出来上がった。

本キット作製

はんだ付けは比較的ラク

さて、いよいよ本番となる「SPFM Lightアタッチメント電源基板」の作製だ。

基本的に各パーツを実装していくこととなる。表面実装部品はないのでジックリ時間をかけてやれば問題なく作製できるだろう。ジャンパー線を接続するターミナルブロックはちゃんと外側を向くように取り付ける事が必要となる程度だ。

そうしてコンデンサを交換して組み上げた「SPFM Light 24V耐圧仕様」が左で「SPFM Light 通常版」が右となる。

ここで作製過程をお見せしたかったのであるが、とても撮影をしながらというのは精神的にも余裕がなかったために完成品の状態からのお披露目となるのはご容赦いただければと思う。

はんだ付け難易度についてはSPFM LightやRE:birth音源モジュールなどを組める人であれば問題ないレベルであったことはお伝えしたい。

出ましたいつものトラブル地獄

さあ、これでSPFM Light改造品とアタッチメント電源基板を組み立てる準備が出来た。と同じようなことを下記のブログにも書いていた…

これを掲載した時点でお察し…な読者には話が早い「はんだ付けには魔物が棲んでいる」ということだ。いやいや実に恐ろしい。

今回は、ミスの特定に長引いたので結論から先に書くと、SPFM Lightの部品ではんだ不良があったという単純ミスで、完成までにだいぶ時間が掛かってしまったのだ。きちんと動作したのでその時の出音を聴いて戴こう。

AC版 コットン より 「オープニング」
©サクセス 1991-2019

終わり良ければ総て良し、なんて言葉はうまく行った時の為にある。人生失敗ばかりの方が多いのだ。

この時にUME-3さん(@ume3fmp)、がし3さん(@gasshi72)、そしてぼんじんさん(@Bonezine)に。トラブル発生初期には、四谷言ノ助さん(@g_yotuya)に戴いたアドバイスの数々、本当に役立つことばかりで感謝の言いようもないほどである。やり取りの中で感じたことや戴いたコメントをいくつか箇条書きにしよう。

※過去ツイートを検索して、追記する予定あり

<はんだ付け関連>

  • まず徹底的にはんだ不良を洗え
  • ベタGNDは長めにこてを当てはんだ不良を防げ
  • はんだ付け後のフラックスは洗浄すること
  • 確認にはスマホカメラのズーム機能を活用しろ

<テスター関連>

  • 部品、コネクタ間の導通をテスターで確認を
  • オペアンプの電圧確認は4番マイナス、8番プラスで

<パーツ関連>

  • 部品同士の接触に気を付ける事
  • 缶アンプは正常時でも結構発熱をする
  • 缶アンプの足抜けないようはんだ付けを

<scci関連>

  • scciconfigを起動時はSPFM LightのLEDが光る
  • 改造基板では外部電源を入れていないと認識しない

<SPFM Light関連>

  • FT-232RLとPICのTX~RX導通確認をすること
  • FT-232RLのVCC・GNDとPICのVDD・VSSの導通確認をすること
  • PICのVDD~VSS間 電圧が5Vになっているか確認すること
  • オシレータの4番~8番ピンの電圧も5Vになっているか
  • 拡張電源側の5Vはきちんと出力されているか

検証項目が山の数ほどでてきて頭がオーバーヒートしそうになったが、ここで戴いた言葉の数々を絶対に無駄にしてはいけないと、はんだごてとテスターを握りしめて踏ん張った。そして遂に作製完了したのだ。

全てのリプは私にとって金言であり教訓でもあった。本当にありがとうございました。

24V耐圧仕様の凄さとは

1.ついに封印解除の時が来た
今までの、USB給電でのオペアンプ駆動では出せなかったと思われる部分が鮮明に浮かび上がってきた。筆者所有のBOSE M3は小型スピーカーでありながら低音再生を可能にしたもので、ひいては低音の音量不足に悩むFM音源の実機再生時に低音を補う為に使うと相性が良かったため、ずっとSPFM LightではRetro Boost Jumper機能をオンにして使い続けていた。

なのだが、今回それが逆に仇となり、24V駆動でパワフルに出すぎる低音がいっそう増幅され音が籠って全体的な音がボヤけてしまうようになってしまった。

今までRetro Boost Jumperを使って重低音を重視したサウンドに調整していたのだが、なんという出音の良さだろう。SPFM Lightを所持し続けてずっと付けっぱなしにしていたRetro Boost Jumperを取り外す日がやってくるとは思っていなかった。

ジャンパーを外した瞬間、キレのある高音が勢いよく飛び出した。だが低音はどうだろう……ちゃんと出ている!本来のFM音源が持っている高音から低音まで隅々に行き渡る高密度サウンドが、24V駆動されたオペアンプを通じ、その封印されし力を開放したではないか。

この感動は標準品のSPFM Lightを所持している方にはなかなか伝えにくい内容かもしれないが、24V駆動改造をされた方にはご理解いただけるのではないかと思う。何かが変わった、確かに変わった、間違いなく変わったと聴くほどに実感できるのがわかる。

2.ヘッドフォンアンプとの相性や良し
ヘッドフォンアンプ内蔵だけにヘッドフォンでの視聴に関してはかなり良くなっていると感じた(筆者所有のMDR-CD900STでの視聴による)

低音~高音のバランスよく音の広がりも十分、解像度もあって三拍子そろった良質サウンドを奏でてくれる事を確認した。この部分においては本キットの狙いが見事に当たっていると思われる。

おわりに

もう…元には戻れない!

皆まで言うな、もういう事はわかっているだろう。

24V駆動改造…参りました!

これはもう一家に一台必要であると宣言せざるを得ない良改造である。皆さんも思い入れのある曲をこの24V駆動のSPFM Lightで演奏してみよう。きっと当時に聴いていた音が、新たな記憶と共に頭に焼き付く事だろう。

再販or続編を熱望する!

「Caribou Works」のホームページには一切触れられていないこの改造基板ではあるが、間違いなく存在していた以上、再販や続編が作られることは期待せざるを得ない。ご無理を言う事にもなるのであまり大きな期待を持ったりするのはいけない事だと思うが、ここに一ファンがいるという事実だけはお伝えしたい。

大変お世話になりました!

本キット作製にあたり、ツイッター上で多くの皆さんからご助言をいただき、誠に感謝の言葉で一杯です。厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

また、最後になりますが、いつも家電のケンちゃんにて迅速に対応頂いており、非常に感謝しております。最近買う量が明らかに増えていて、家族からのカード明細チェックで「最近すんごく増えてるんだけど」という言葉が耳に刺さって痛くなってきたのですが、負けじとこれからも同人ハードを買いあさりたい所存です。いつもありがとうございます。

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